<一筆>娘婿経営(新聞連載コラム#11)
<熊本日日新聞 | 2023年3月21日>
2020年版の中小企業白書は、全国の社長の年齢分布の推移を示して、70代以上の割合が増加する一方で40代以下が減少し、経営者の高齢化が年々進んでいると指摘しています。
16年以降は、年間4万件を超す企業が経営者の高齢化や後継者不足を理由に休廃業・解散しています。政府がさまざまな制度を用意して中小企業の事業承継を支援するのは、中小企業が培ってきた「人」、設備などの「資産」、ノウハウや特許などの「知的資産」といった貴重な経営資源を、次世代の経営者に引き継いでいくことが非常に重要だからです。
事業承継には「親族内承継」や「従業員承継」、合併・買収(M&A)といった「第三者承継」があります。04年に義父の会社に入った私の事例は、娘婿による親族内承継に該当します。
「娘婿経営」の代表例は自動車メーカーのスズキです。4代目の社長を務めた鈴木修氏は銀行出身ですが、広い見識で積極的に海外に進出し、インドをはじめとするアジアの成長市場で販売を大きく伸ばしました。
娘婿経営者の多くは、入社前に勤務していた組織でさまざまな経験を積んでいます。事業承継後に実務経験を積むことで、広い視野から自社の事業基盤や問題点を客観的に把握できるようになります。
「娘婿経営者が集う会があれば」と6人の経営者が意気投合して、19年に異業種交流会「愛彩[あいさい]会」を設立しました。年に数回、酒を酌み交わしながら情報交換を行っています。毎回笑い声が絶えず盛況です。
本記事は、2023年1月~3月にかけて熊本県の地方紙「熊本日日新聞」に連載された弊社社長のコラムをアーカイブとして掲載しております。